第1章

2/20
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
"""ママとマドンナ""(上巻)" 単身赴任の主人公が、 奇妙な男女関係に巻き込ま れながらも、仕事に恋に活躍する大人のラブ・ストーリー 上巻 プロローグ     始まりの出張     発覚のバレンタイン 中巻 まさかの転勤     大いなる始動     夏の勢い     休戦の祭り 下巻 試練の秋     異動の季節     思わぬ展開     エピローグ プロローグ 朝早くから、冷たい雨が音も無く、降っていた。 庭の木々が 紅葉の盛りを越え、雨に濡れて何とも寒々しく感じられた。 静まりかえった居間で、ひとり朝食を取りながら、稲垣直樹 は憂鬱な気分になっていた。 来週に、引越しの日が迫って いた。 二十年住んできたこの北摂の一戸建ての家から、 神戸のマンションに引越しするのである。 この週末の二日 間で荷造りを終えないといけない。 しかし、神戸に移るのは 直樹だけであった。 当初は母親を連れて行くつもりが、先 週彼女は突然神戸には行きたくないと言い出し、直樹の妹 の京都の住まいに転がりこんでしまった。マンション暮らしは 嫌だと言うのである。結局、独りだけの寂しい引越しとなっ てしまった。朝食を済ませ、 気を取り直して、先ず妻の部屋 から片付けることにした。妻とは別居中であった。一年前に 息子との確執が有り、また直樹の母親との嫁姑問題も有っ て、 妻と息子はこの家を出て、市内に近いマンションに移っ たのであった。 母親とふたり暮らしとなり、部屋が余ってしま って、それらが無駄なデッドスペースとなり、直樹は引越しを 考えたのであった。それと神戸のマンションからは海が見え るので、 神戸っ子の妻が気に入ってくれれば、 また皆で暮 らせるかも知れないと考えたのであったが、それも空中分 解してしまった。 母親が神戸に行かなくなり、妻が戻り易く なったのだが、彼女は仕事を抱えており、この近辺が彼女の 働き場であったので、即座に神戸には移れないのだ。 それ
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!