辞めちまった

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 俺は駅前のコンビニに入ろうと足を向けるが、午後5時という賑わう通りに躊躇してしまう。  俺の見た目はまだ働く男だ。  しかしだ、この賑わうコンビニに入って求人雑誌を手に取る勇気はない。  アルバイトの大学生にも、学校帰りの高校生にも、つまみを買いに来た社会人にも、家路を急ぐ主婦にも馬鹿にされながら、そいつを手に取る。  出来るわけないだろ!!  いやいや、どんだけプライドが高いんだよ。  俺は無職だ。認めるんだ。俺は底辺に落ちたんだ。  待てよ。あのブラック企業に人生捧げる方がどうかしている。  これは転機だ。これから、ホワイトな場所で己の力を発揮するんだ! 「とにかく、あれだ。別のコンビニに行こう」  賑わうコンビニに入る勇気は、やはりなかった。
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