月が、綺麗ですね。

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「僕はこのまま、1人で生きていくと達観して、諦めて、ただ日々が過ぎるのを待っていた詰まらない人間です。 だから、お嬢さんを導いてあげる事はできません」 「はい」 「お嬢さん、貴女だけで決めて下さい。 お嬢さんはもう炊事や掃除は、お嫁にいける程に上達しました。料理も、目分量を辞めれば完璧です」 「――はい」 「お父様に謝って家に戻れば、今のお嬢さんを見て、きっと大学に行く事は許してくれます。」 「……」 「それでも、僕のそばに居てくれるなら、僕はお嬢さんの一生を補償します」 「……」 先生らしい発言だった。 追ってはくれないし、追いかけてもくれないんだ。 それ、は、 『家』という後ろ盾が無くなった自分に価値が無いって諦めてるから。 自分を過小評価しすぎているから。 「分かりました。もう一度、父と殴り合いの喧嘩をして、腹を割って話してみたいと思います」 でも、私はきっと先生が好き、だから、 頼りないけど、安心できる先生を、好き、だから。 諦めない。 「でもね、お嬢さん」 先生は真面目な顔で言う。 「お嬢さんを一目見てからずっと、月が綺麗すぎで苦しいんです」
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