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「オヤジのプロポーズ真似しちゃおうかなぁ、今日は満月だし」
「え!?」
「おふくろ、酒が入ると必ずその話するからなー。しかも絡み酒! まじウザい!」
「……あれ、君もうお酒飲めるの?」
いつの間にか、大人びていた息子はちょっと拗ねた口調で僕を咎めた。
「オヤジが小説の締切で籠もってる間に誕生日迎えたじゃん。後日、ケーキ大食い大会したの忘れたの?」
……そういえば。
締切後、フラフラな中、お嬢さんが山盛りのケーキを食べさせてくれた気がする。
「本当に、オヤジはおふくろしか見てねーよな」
「私が何か?」
気づいたら廊下に、髪はボサボサで泥まみれのお嬢さんが立っていた。
「また派手にやりましたねぇ…」
髪の毛を撫でて整えると、お嬢さんは悔しそうに唸る。
「もうあのクソジジイ、今度抵抗したら、遠くの老人ホームに捨ててや――――おい! 何処行くんだ?」
息子がコソコソと靴を履いていたので、すかさず帽子を奪い取った。
「デート♪ 夜ご飯いらない!」
「あぁ!? 朝のうちに言えっていつも言ってるだろーがぁ!もう用意してるのにぃ!」
「ごめんねー♪ 誰にも俺は止められないんだよ」
そう言うと、帽子を奪い返し、走って逃げていった。
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