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そして、やっぱり先生は私を否定しなかった。
「僕は君という人がどんな人か知ってましたから。
君は退屈で平凡な生き方は似合わないって」
初めてお嬢さんを見た時は、まだ幼稚園生でした。
「好きな子をイジメる男の子を、貴女は気づきもせず何倍にもイジメ返していました」
クスクスと、笑う。
「後輩のクセに、レギュラーになるなんて、と先輩に言われた貴女が、格好良く言い返してるのも見た事あります」
嗚呼、この子は自分に正直で、嘘なんてつかないんだ。
純粋で綺麗な子だなって。
「……君のお母さん、心配していましたよ」
「え?」
「体が弱いお母さんの為に、医者になろうとするお嬢さんは美しい。けれど、お母さんを心配させては駄目ですよ」
こっそり連絡ぐらいはしなきゃ、ね。
「僕は、婚約者がいました」
食べ終わったお皿を重ねながら、先生は言った。
「両親が決めた婚約者。けれど、両親が事故で亡くなると、婚約破棄されました。彼女は、『私』ではなく『家』の為に嫁ぐから、『家』が無い僕は要らないのです」
だから、両親が残したこの屋敷で、誰にも迷惑かけずに生きてきました。
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