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「僕はこのまま、1人で生きていくと達観して、諦めて、ただ日々が過ぎるのを待っていた詰まらない人間です。
だから、お嬢さんを導いてあげる事はできません」
「はい」
「お嬢さん、貴女だけで決めて下さい。
お嬢さんはもう炊事や掃除は、お嫁にいける程に上達しました。料理も、目分量を辞めれば完璧です」
「――はい」
「お父様に謝って家に戻れば、今のお嬢さんを見て、きっと大学に行く事は許してくれます。」
「……」
「それでも、僕のそばに居てくれるなら、僕はお嬢さんの一生を補償します」
「……」
先生らしい発言だった。
追ってはくれないし、追いかけてもくれないんだ。
それ、は、
『家』という後ろ盾が無くなった自分に価値が無いって諦めてるから。
自分を過小評価しすぎているから。
「分かりました。もう一度、父と殴り合いの喧嘩をして、腹を割って話してみたいと思います」
でも、私はきっと先生が好き、だから、
頼りないけど、安心できる先生を、好き、だから。
諦めない。
「でもね、お嬢さん」
先生は真面目な顔で言う。
「お嬢さんを一目見てからずっと、月が綺麗すぎで苦しいんです」
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