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それから何度、月を一緒に眺めたでしょうか?
一言いえば、倍返ってくるお嬢さん。
お嬢さんに僕の気持ちを知って欲しいような、知って欲しくないような……。
けど、伝わったら甘く苦しくお嬢さんを想って胸を焦がす。
僕はお嬢さんを目の前にすると、上手く言葉が出てこない、素朴な少年のようでした。
「あれ? おふくろは?」
金髪に染めた髪に、オレンジ色の縁の眼鏡をした、僕の息子はきょろきょろとお嬢さんを探します。
「お嬢さんは、お義父さんが足を悪くしたらしく、病院に担いで行くと、朝から実家ですよ」
そう言うと、息子はヤレヤレと首を振る。
「爺さんが素直に病院行くわけねーからまだ喧嘩してるんだろーなぁ。てかおふくろが診ればいいんじゃねーの?」
「お嬢さんは内科だからねぇ。それにあの親子は似た者同士だから、殴り合いの喧嘩ぐらいが元気があって丁度良いですよ」
「最初は本気で喧嘩してるかと思って、止めてた俺が馬鹿みたいだよねー」
「どこか行くのですか?」
鏡の前で帽子と上着を何回も試着して、決めポーズをとる息子に尋ねると、嬉しそうに答えた。
「デートだよ、デート。今日こそ決めちゃうぜー♪」
息子は誰に似たのか惚れっぽく、猪突猛進で、幼なじみの女の子に何度も何度も告白しては惨敗している。
「嫌いなら、デートなんてしないですからねぇ………」
実れば良いのですが、そんな簡単に実れば恋愛なんて苦労しませんよね。
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