第一話

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黄金(こがね)色の髪が肩より少し下なのを軽く紐で結わき、藍色混じりの金の瞳が揺らいだ。 執務室は、時間が止まったままのクリスの体躯(たいく)に合わせて造られている。 丈夫な(かし)の樹を使った机には、金の装飾が隅に(ほどこ)されている。 レミジオの執務机も近くにあるが、身長が180cmあり机の高さも椅子の大きさも違う。 皇帝である父・アントニウスは、クリスが呪いを掛けられた当初は怒りに満ちて、クリスを責めた。 時間が経つにつれ、その姿に皇宮(おうきゅう)の者たちも、貴族たちも慣れてしまった。 そして、クリス自身も今の姿に慣れてしまっていた。 「イチローが来るのはいつなんだ?」 「来月到着の船の予定との事です」 「見合いは全て断る」 「そう仰るかと思いました」 レミジオは、皇帝宛の紙を準備し渡した。
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