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アントニウスは、何とか見合い話を出し続けていたが……クリスは頑なに拒否し続けてきた。
マリアが憂いを帯びた瞳で、アントニウスを見つめる。
「……あの子のことは……」
言葉に詰まらせるマリアの手を、アントニウスは優しく握る。
「我々には、もう見守ることぐらいなのやも知れぬ」
「そうですね」
2人の会話がそこで途切れた。
謁見の間で、玉座に座る2人は、天井に描かれているクリスト様を観て心の中で祈った。
――2人が結ばれんことを――
来月やってくるイチロー達に、一縷の望みを託して。
書簡を持ってきて、控えの間に居たレミジオは皇帝からの返事を貰い受けるとクリスが居る執務室へと戻った。
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