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教会での葬式がいつの間にか終わり、参列者がぞくぞくと外へと向かう。
奏は耐え切れず、父から離れ中央教会の庭園の奥へと足を運んだ。
「……くっ……マ、マ……ひっく……」
1人になって涙が溢れ出てきた。
葬式で退屈したクリスは、庭園を歩いていると、花々が咲いている植木の茂みの奥で声がした。
――何だろう?――
茂みの奥でうずくまっている、長い黒髪の黒服を着た子供がいた。
――女の子!?――
クリス自身、まだ12歳になったばかりの子供ではあったが……。
『お前、何泣いているんだ?』
公用語であるフランス語で、クリスは子供の頭の上から声を掛けた。
ビクリと身体が小さく動き、小さな黒い瞳の少女が顔を上げた。
白い陶器の様な肌に、うっすらと頬は赤く、唇も紅い。
――まるで、童話の白雪姫みたいな――
そう思ったが、少女からはなかなか返事がこない。
再び声を掛けようとしたところで、少女が口を開いた。
『……ないて……ない……』
さっきまで泣き腫らしていたのが分かるほど、瞳は真っ赤なのに。
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