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バルコニーに2人の影が落ちる。
月明かりに照らされ、奏の表情は突然のキスに困惑が表れていた。
困惑の原因は、それだけではなかった。
目の前に居る、クリスの13年前と変わらぬ姿だった。
「クリス、その……姿が……」
驚かないで欲しいとは、皇妃マリアに言われていたものの、実際、目の当たりにすると動揺は隠せない。
クリス自身もどこから話したら良いものか考えていた。
唇を一文字に結び、意を決した様に口を開いた。
「取引をしたんだ、魔法使いと」
「取引?」
――オーセンフェリアには、昔から魔法使いが居るという“噂”は聴いていたけど――
「君と……カナと……どうしても逢いたくて」
少年の姿のクリスが、どこか憂いを帯びた青年に見えた。
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