第8話

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女学校を卒業した後は、父の仕事を手伝っていた。 下手に教養の高い女性は、社交界では敬遠(けいえん)されていた。 オーセンフェリアに教鞭の話が出て、父が「奏も一緒に行かないか?」と誘ってくれた。 異国の地に(おもむ)くことはなかなか難しい。 今回も、皇帝アントニウスの勅命(ちょくめい)があってのことだった。 ――クリスとの“約束”が果たせる―― 母を亡くした土地に行くのは、心に引っかかるものがあった。 しかし、いつまでも逃げていてはいけないと、自身を奮い立たせてくれた、姉・兄代わりの東條(とうじょう)家の優子と(たける)が背中を押してくれた。 ペンダントに触れると、不思議と温かい気持ちになった。 先ほどまで考えていた、母へのことも許されたかのように……。
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