第一話

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「そう言えば、イチロー様がまた教鞭を振るいに来られるそうです」 「イチローが!? 本当か!?」 「私目≪わたくしめ≫が、今まで嘘の報告をしたことがございましたか? クリス様」 表情の読めない、黒に藍が混じった瞳のレミジオが言う。 ――これでカナとも―― 「ご息女のカナデ様に関しては……」 「来るんだろうな?」 「えぇ、その様です」 先程までの不機嫌な表情も、痛い見合い話しも忘れ浮かれ始めている。 「お忘れでしょうが……その御姿(おすがた)では……」 自分の姿を思い出して、クリスは落胆する。 カナが去った翌日に、魔法使いにカナと“約束”を果たせるようにして貰った代わりに、当時の姿のままの“呪い”を掛けられてしまったのだ。 カナの亡くなった母のマナミを想い出すと、彼女は綺麗な淑女となっているのが想像できた。 一方で、クリスは身長が150cm程のまま。 いくら彼女との“約束”のためとはいえ、本当に“愛される”のかも不安だった。
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