101人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう言えば、イチロー様がまた教鞭を振るいに来られるそうです」
「イチローが!? 本当か!?」
「私目≪わたくしめ≫が、今まで嘘の報告をしたことがございましたか? クリス様」
表情の読めない、黒に藍が混じった瞳のレミジオが言う。
――これでカナとも――
「ご息女のカナデ様に関しては……」
「来るんだろうな?」
「えぇ、その様です」
先程までの不機嫌な表情も、痛い見合い話しも忘れ浮かれ始めている。
「お忘れでしょうが……その御姿では……」
自分の姿を思い出して、クリスは落胆する。
カナが去った翌日に、魔法使いにカナと“約束”を果たせるようにして貰った代わりに、当時の姿のままの“呪い”を掛けられてしまったのだ。
カナの亡くなった母のマナミを想い出すと、彼女は綺麗な淑女となっているのが想像できた。
一方で、クリスは身長が150cm程のまま。
いくら彼女との“約束”のためとはいえ、本当に“愛される”のかも不安だった。
最初のコメントを投稿しよう!