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「それほどの手間暇をかけてまで、相手に喜んでほしい、と思えることは、とても素敵なことよね」
お菓子を作って、冷やし固めて、それをラッピングをする。
きっとそれだけでお休みの一日が丸々潰れてしまうだろう。
それでも相手に喜んでほしくて作る、という気持ちは、とても大事で素敵なことで、私もその気持ちなら、十分に理解できる。
それが友としてはもちろん、大切な大事な人のためであれば、丸一日潰れたって、苦になどならない。
ちら、と隣に立つ彼を見やれば、「ん?」と目が合った彼は、柔らかく笑いながら首をかしげる。
「別に…なんでもないわ」
ふい、と思わず視線を逸した自分は、可愛くないと思う。
けれど、そんなことを思っている、ということですら、隣に立つ彼には、きっとお見通しだ。
「ねぇ。美晴さん」
「…何かしら」
こと、という音とともに、彼の持っていた紅茶の小瓶が、作業台に置かれる。
「今年は僕からも美晴さんにチョコレートを贈りたいから、一緒に作ろうか」
「……本当に君は…」
チョコレートすら溶けてしまいそうな甘い表情を浮かべる冬貴に、ほんの少し、耳が熱くなる。
「今の美晴さんなら、体温でチョコレートを溶かせそうだね」
「それはきっと冬貴のせいだわ」
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