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俺はダメだって言ってるのに、
桑野くんは聞いてくれなかった。
「もう、ダメだってば、ね、桑野くん」
「うるせぇ」
「あ、あ・・・っ」
確固たる意思があるのか、
桑野くんは抵抗する俺の手を避ける。
「ねえ、桑野くん!あ、もう・・・っ、あ、ああ・・・」
ダメだって言ったのに、俺が見ている前で、
桑野くんは・・・
「ん?・・・出ろ」
「・・・え?」
「紅から電話」
桑野くんは俺に携帯電話を手渡す。
ディスプレイには紅ちゃんの名前が表示されていた。
こんな状態で電話に出させるなんて。
「も、もしもし」
『えっ・・・どなた、ですか?』
「ああ、ごめんね。桜庭だけど」
『さ、桜庭さん!?』
電話の向こうの紅ちゃんが動揺する。
それはそうだよね。
お兄ちゃんに電話をして俺が出たんだから。
でも、紅ちゃんの用件を聞くよりも先に、
俺は紅ちゃんに言いたいことがあった。
「・・・あのね、紅ちゃん」
『は、はい』
「君のお兄さん、今・・・・・・俺のカツにケチャップつけたんだけど!」
『・・・・・・は、はぁ』
桑野くんが買ってくれたお弁当の中に、カツが入っていた。
それに桑野くんは躊躇わずにケチャップをつけたんだ。
俺はソース派だから嫌だって何度も言ったのに、
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