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それとも仲良く振る舞っているのは表面上だけで、あのグループの中から誰か一人二人でも抜けた時には、教室で見掛けたあの子達みたいに、残った二人三人の口から黒々と濁った本音が漏れ出してくるものなのだろうか。
それとも、さっきの笑い声は私の後ろ姿を見て発したものだったりするのだろうか。
小石を蹴りながら歩き続ける私の姿は、後ろからみるとどういう形になっているのだろう。
あんまり滑稽だからうっかり吹き出しちゃったとか、そういう事なんだろうか。
別にそんな事はないだろう、と、分かってはいるけれど。
――嫌だなあ。
石ころを蹴り始めた切っ掛けも蹴り続ける理由も、別にすっかり忘れたわけじゃないけど。
頭の中には思考が浮かび始め、心の中側も外側も鬱々と沈んだ暗い色に染まっていくのはそう簡単には止められない。
――何で皆平気な顔して、人と接しているんだろう。
どうして皆、毎日毎日飽きもせず学校に通えるんだろう。
嫌な事があって、勇気を出して教室に入って、それでもまた嫌な事があって、その度に学校を休んでる私の方が馬鹿みたい。
私の心が弱いだけなのかな。皆の心はもっと頑丈にできているのかな。
多分、そうなんだろう、きっとそうなんだ。
一度沈むと簡単には浮き上がれない。
気付けば鬱々とした思いばかりが心を占めて、小石を蹴る力も増していく。
かつん。ころころ。ごつん。ころころころ。
小石はいいなあ。
意志もないし心もないし、こうして蹴られた所で痛くも痒くもないんだから。
学校に行かなくてもいいし辛い思いもしなくていいし。
親も友達も作れないけど、その分気が楽だろうし。
お腹の中でぐつぐつ煮えてきた苛立ちをぶつけられるものといえば、足下の小石しか見当たらない。
勢いをなくして止まった小石を力一杯蹴り飛ばす。
固い地面の上をころころいって飛び跳ねていった小石は、数メートル先に見える十字路の辺りまで一気に転がっていく。
小石に追いつく頃には、信号機は青から赤に変わっていた。
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