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ほづみは、遼のテリトリーに引き摺り込まれ、体を思う存分弄ばれている。
「興が冷めたなら、家に戻っていいんだぞ。俺は、疲れた。寝たいんだ」
「ほづみさんが締め切りぎりぎりまで頭をひねっていたせいで、進行が随分と押しているってさっき話したでしょ? 僕は今、オフィスで仮眠中です。薄いマットレスで、ストレス倍増ですよ。心は荒野のごとく荒んでいます」
「仕事が押してるなら、さっさと起きて仕事に戻っ……んむっ」
唇が触れ、舌が差し込まれる。
濃厚なキスは不本意ながら気持ちが良くて、遼を受け入れるように体から力がぬけてゆく。
「ほづみさんのせいで、酷い目に遭っているんです。慰めてくださいよ」
人肌の生暖かさはとてもリアルで、夢の中にいるのか現実なのか分からなくなってくる。
ほづみは溺れそうなほどの強い快感に眉をひそめ、遼の肌を引っ掻いた。嘘とは思えない質感に、腰がきゅんと甘く痺れる。
「キス、慣れてきちゃいました? あまり嫌がらなくなりましたね」
嬉しいなぁ。と微笑む顔に、胸が苦しくなるのは、遼の造作がほづみの美的センスを刺激してくるからだ。
決して、キスをされて喜んでいるわけではない。
どんなに腹の立つ相手でも、美しいものは美しい。
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