ごめんね、ママ

4/13
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「父さん、良く母さんの友達の連絡先まで、すぐにわかったね」 焼香の列を見つめながら、一人息子が呟いた この春に、働き始めた息子に、その首元を締めるネクタイは全く似合わない 「当たり前だ。ママのことは何だって知ってるからね」 年始の挨拶状を書かなくなっても、僕が住所録のファイルを小まめに更新していたんだ。無論、妻の分もだ 「はっ、根拠のない自信だなあ」 息子が、僅かに肩を震わせて呟いた 息子の足元で黒靴が鈍く光った 根拠なんて要らない。当たり前じゃないか だって妻のことは何でも、僕がしてあげていたんだから だから、僕は妻のことは何でもわかってるんだ 妻のことだけじゃない、家のこともだ 君たちの世話を、どれだけ僕がしてやっていたのか、わかっているのかい
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!