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「父さん、良く母さんの友達の連絡先まで、すぐにわかったね」
焼香の列を見つめながら、一人息子が呟いた
この春に、働き始めた息子に、その首元を締めるネクタイは全く似合わない
「当たり前だ。ママのことは何だって知ってるからね」
年始の挨拶状を書かなくなっても、僕が住所録のファイルを小まめに更新していたんだ。無論、妻の分もだ
「はっ、根拠のない自信だなあ」
息子が、僅かに肩を震わせて呟いた
息子の足元で黒靴が鈍く光った
根拠なんて要らない。当たり前じゃないか
だって妻のことは何でも、僕がしてあげていたんだから
だから、僕は妻のことは何でもわかってるんだ
妻のことだけじゃない、家のこともだ
君たちの世話を、どれだけ僕がしてやっていたのか、わかっているのかい
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