Happy Wedding

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白いサテンの生地の上に畏まって乗っていた、少し小さいサイズの指輪を受け取り、手袋を外した智の左手をそっと恭しく捧げ持つと、小刻みに震える薬指に挿し通した。 するりと元あった場所に収まったそれは、キラリと美しい光を放っている。 智は深呼吸すると、俺の指輪を受け取り、未だ震える手で俺の薬指に惑うことなく挿し入れた。 凛が静かに見守ってくれている。 「それでは、結婚証明書にサインをお願い致します。」 白いレザーの表紙のそれに、順番に二人の名前を書き添えた。 「誓いのキスを…」 俺は片手で智の腰を引き寄せ、顎を少し上にあげ、引き寄せられるように唇を合わせると…想いを込めて長い、長いキスをした。 名残惜しげに唇を離した俺達に 「これをもちまして、お二人の結婚を宣言致します!」 再び聖書の一部が朗読され、讃美歌が流れ出す。 見つめ合ったまま、指を絡ませ繋いだ智の手は震えたままだ。 愛おし過ぎて今すぐ抱きしめたいのを必死で我慢した。 パッヘルベルのカノンが流れ始めた。 それを合図に、俺は智の手を繋いだまま、凛を呼び寄せると小さな手を握りしめ、三人で真っ直ぐに胸を張って歩き出した。 扉が開いた瞬間 「おめでとーー!」「congratulationses!!」 様々な祝福の声とフラワーシャワーが降り注ぐ。 隼人さん、遙さん、式場のスタッフさんが勢揃いで、アーチを作って待っていてくれていた。 「これは…?」 戸惑う俺達に 「スタッフ一同の気持ちです!本当におめでとうございます!」 隼人さんが微笑んだ。
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