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「遅いですな…」
「何時に来ると言っていた?」
時間を気にしたアレフの呟きにザイードは耳を向けた。
「昼前には来ると仰っていたのですが…」
この国に時間はあって無いようなものなのだが、普段から時間厳守のアサドにしては珍しい。
そう思いながら口にしたアレフの声に、ちょうど扉を開けたアサドが返した。
「まだ昼前だ。遅れた訳じゃないからそう厳しいことを言うなアレフ」
苦笑いを浮かべて訪れたアサドはアーキルがお茶を用意したテーブルのソファに腰を下ろした。
アサドは席に着くなり何か言いたげな目線をチラリとザイードに向けた。
「なんだ?」
「いや、後で話す…」
短く返して前を向く。ザイードは少しばかり不機嫌な様子のアサドに片眉をつり上げてふんと鼻を鳴らした。
「……で、いったいどんな話を持ってきた?」
ザイードは手短に問い掛けていた。
「ああ、実はキヤーナからの提案だ」
「………」
「治安部隊を公安の特殊部隊として育てたらどうかと…腕はまだまだだが欲に翻弄されない心意気は中々のものだと高く評価している。裏で活動しながらしっかりその辺も目についていたらしい、キヤーナの提案には国王も賛成だ──…悪い話じゃないだろう?」
ザイードは意見を問われ顎に手を置いた。
部隊の者達のことを考えればそれは願ってもない話だった。
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