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自治体の部隊の給金は雀の涙とも言えるくらいのもの。今まで衣食住を邸で賄っているからこそ暮らしてはいけてるようなものだ。
部隊の中にはザイードの寵姫を妻に迎えた者もいる。
祝いにと新居を用意してやったがその先の生活が心もとないのは目に見えてのことだった──
「それは有り難い話だ」
ザイードはすんなりと受け入れた。
国の役人になれば給金は今よりも上げてやれる。願ってもない話。
アーキルのような特例がない限り、学のない民が役人になれるチャンスはそうない。
特殊部隊と言えば腕も必要だがそれよりも大事なのは内面性だ。
部隊の者達は今まで金銭の欲に捕らわれず体を張ってきた。
思えばよく着いてきてくれたものだと我ながら頭が下がる。
“オイラもザイード様みたいになる!”
ザイードはアシェラフの言葉を思い出していた。嬉しいことに、無利益にも近い報酬でも部隊に憧れる少年達は多くいる。
今のこの国では学問に子供達皆が就くのが難しい。
多くの民の子は家を手伝い、稼ぎに出ている者は小遣いにも満たない金銭で働かされているのが実状だ。
役人になるには人並み以上の学歴がいる。
だが──
腕のある者
学のある者は金で雇えるが、心だけは金では雇えない。
裏切りと欲。
人の心にそれがあるからこそ政治が腐敗した。
その人間の心の裏を探る──
政界から腐敗を取り除くには裏切りにも欲にも駆られぬ強い信念を持った者が必要だ。
キヤーナは良いところに目を付けてくれたものだとザイードは口元を微かに緩めていた。
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