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「ここはそのまま部隊の拠点として使わせてもらうがいいな? そのほうが何かと便もいいだろうからな」
アサドの言葉にザイードもアレフも頷いた。
この邸に慣れた使用人達もそのまま公安部隊の世話を引き継ぐ形で雇用される。
頸を切らずに済んだとザイードもその提案について何も言うことはない。
副族長であるターミルの後を若手のラシードが継ぐことになっているが、そのラシードが育ってくれればやがては族長を任せてもいい。
それまではキヤーナが部隊の指揮をとる事になる。
今後の部隊の話が一段落するとザイードは何気に顎に手を添えて考え込んでいた。
アサドは少し難しい表情を浮かべるザイードを横目にしながら腰を上げた。
「どうした、気になることでもあったか」
「ああ、少しな…」
尋ねるアサドに答えながらザイードも立ち上がると手を差し出した。
「……じゃあまた何かあったら寄らせてもらう」
「ああ」
握手を交わし、ザイードの手を握ったままアサドは何か言いたげな目を向ける。
「なんだ?」
「……さっき見知らぬ男が庭にいた──…何者かと聞けばお前の客だと威張って口にしていたが…」
「──……」
ザイードは一瞬驚いた顔を見せるとそれをはぐらかすように表情を戻した。
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