こんな夫婦

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 あたしは自分たちが結婚した時のことを思い出す。  結婚する前にあたしはもう既に身ごもっていて、急いで籍を入れた後は、子育てと共にバタバタと結婚生活はスタートしたんだ。  お金もないし毎日が戦争のように忙しく、新婚の甘い雰囲気なんて皆無で。  こんなんじゃダメだ! そう思った私たちは、ある作戦を開始した。  名付けて「ユウくん・ミキティー作戦」!  あえて「パパ」や「ママ」と呼び合うんじゃなくて、お互いの名前で呼び合うことで、新婚みたいなラブラブ感を出そうという作戦だったんだけど......そんなんでラブラブになれたら苦労はしないよねぇ。  実際には新婚気分どころか、今じゃただの同居人? ルームシェア? 協力者? そんな感じなんだけどね。  冷蔵庫から桐の箱を取り出した。  これは一箱五千円もする高級梅干しだ。あたしが週に二回、家政婦として働いてる三津谷さんっていうお金持ちの老婦人がいるんだけど、その人が「お歳暮に貰ったけど食べきれないから」ってあたしにくれたの。  粒が大きくて、いつも食べてる一パック298円の梅干しと全然違うんだ  子供も大きくなってきて、これからもっとお金が必要かと思って始めた家政婦のパート。   でも……ユウくんたらどうして仕事を辞めるだなんて。  はあ。確かに結婚前は職を転々としてたけど、今回の仕事は割と続いてるなあ、って思ってたのに。どうしていつもこう無計画なのよー!  素麺の上にみじん切りにした梅干しと、刻んだシソ、ネギ、それに茹でた鶏肉を乗せた。  それから麦茶をグラスに注ぐ。麦茶はカフェインも入ってなくて夜でも安心だし、夏バテ予防にピッタリなミネラルが沢山入ってる。  あたしは勉強は苦手だったけど、そういう知識は覚えられるんだ、不思議なことに。  よしっ、完成! ミキティー特製夏の冷やし梅素麺! 「できたよー」 「おおっ、素麺かあ。ちょうど食いたかったんだ!」 「でしょでしょ?」  夜に麺なんて嫌だって言う人も居るけど、食欲の無い夏はこれぐらいが丁度いい。ユウくんは凝った料理より、いつもこういうののほうが喜ぶんだよね。
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