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あたしはため息をついた。
仕方がない。
決して裕福な生活ではないかもしれないけど、新しいことを始めるには若くないかもしれないけど、よく考えたら大変なのは今に限ったことじゃない。
あたしは麦茶を飲みながら想像する。
目の前に広がる青い海を。白い砂浜を。
そしてそこに佇む小さなカフェを。
壁にはユウくんが昔好きだったサーフボードが飾ってあって、店内にはいつも懐かしのナンバーがかかっている。
カウンターの奥ではオーナーの老夫婦が仲良く美味しいコーヒーを入れていて、その香りが外まで漂ってくる、そんな光景を。
素麺をすする。梅の香りのする麺がツルツルっと喉を通り過ぎる。
素麺と共に、何かがすとん、と腑に落ち音がした。
「ま、たまにはそういうのも悪くないね」
グラスの中でカランと氷が鳴る。
そうだね、 新婚気分で、また一から始めるのも悪くない。
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