環状線のエロス

　取っ手をやや引き出し、キャリーバッグを斜めに傾け、南口に向かった。北口は繁華街に通じ、利用客が多く、南口は住宅街に通じ、利用客は少ない。

　ガラガラと音を立ててホームを列車の進行方向にやや進んだ。上り階段があるが、それは使わない。

　階段の脇を通り抜けると、エレベーターがあり、それに乗って改札階に上がった。エレベーターを降り、改札前に来ると、キャリーバッグを立てて少し休憩した。

　ノルマは溜め息をひとつついた。

　ふたたびバッグの取っ手をつかむと、改札前を通り過ぎ、外回り線へのエレベーターに乗り込んだ。二人の客とともにホームに降りると、ちょうど列車が走り去ったところだった。

　南口へ向かう客とすれ違いながら、ガラガラと音を立てて北口方向に進んでいった。