環状線のエロス

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 ホームの半ばまで来たところで、若い女駅員を見つけた。ショートカットで制服を凛々しく着ており、ホウキでちりとりに煙草の吸殻を掃き入れている。  近くに寄ると、「高橋(有)」の名札が確認できた。この駅にはふたりの女駅員がおり、ふたりとも高橋という姓だ。ひとりは高橋有紀、ひとりは高橋真由子。  高橋有紀であることを確かめ、ノルマは話しかけた。 「すみません」 「なんでしょうか?」  ホウキを止め、高橋有紀が応じた。キャリーバッグに目を留めている。
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