サヨナラ

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1人で歩く帰り道。 コツコツという足音だけがただ響く。 「もう春か…」 誰にでもなく発した呟きが、虚空へと消えた。 世の中、本当に嫌な奴ばかりだ。 嘘つきで陰口が生き甲斐のクラスメート。 子供の学校生活には無関心な親。 生徒を物の様に考えている教師。 そんな吐き気がする程薄汚れた世界で17年生きてきた私は、 やはり薄汚れているんだと思う。 『何もかも消えちゃえっ!!』 毎日に嫌気がさすと、私がいつも念じてきた願い…。 願いなんて言うと大袈裟だが、要するに現実に叶わないと分かっていて言う自己満足の様なものだ。 フッと空を見上げると、せわしなく飛んでいた雀が塵に消える。 家が、学校が、店が、道路が、橋が、車が、自転車が、海が、空が、動物が… そして人間が、 みんなみんな跡形もなく、姿を消した。 『言霊…ってあるんだよ』 いつか亡くなった祖母が教えてくれた話が頭をよぎる。 消したくないものだってあったなぁ…。 遠くへ転校してしまったが、毎月手紙を書いて送ってくれる親友。 私が両親に怒られてふてくされると、いつも慰めてくれる弟。 何故か私に懐いてた、近所のポチ… 私もいずれ消えるのだろう。 消えかけた土手にゴロリと寝転んで、落っこちそうな空に向かって呟いた。 『サヨナラ』 *
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