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ウナギが滅びそうなら、ウサギを食べればいいじゃない
大学の前期日程が終わり、夏期休暇が始まった。
不慮の事故で両親が亡くなり、もう一年。一周忌の法要を営むのが普通なんだろうが、両親は一人っ子同士で、祖父母も随分と前に他界したので呼ぶべき親類もいない。大体、菩提寺も宗派もよく解らないし、信心もないのに行うべき事でも無いだろう。死ねば、人は土に還るのだ。
とは言え、何もしないのも気が引けるので、遺骨を預けてある納骨堂に行って、線香をあげる事にした。
僕が利用している納骨堂は、それなりに賑わっている商店街の一角にある。無宗派で、骨壺を収納するロッカーが並んでいるだけの無機質で簡素な処だ。半官半民の第三セクターが運営していて、安上がりなだけがとりえである。
アルバイトらしき老いた係員に申し出て、簡素な祭壇をロッカーの前に用意してもらうと、僕は来る途中の百均で買った線香とロウソクに着火して備え手を合わせた。
脳裏に、両親が健在だった頃の思い出が蘇って来る。天涯孤独になったのだと、改めて思い知らされた。
憂鬱気味な気分で納骨堂を出る。時刻は五時頃だが、夏場なのでまだ充分明るい。
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