ウナギが滅びそうなら、ウサギを食べればいいじゃない

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 先生の実家には、インターネットの画像通話で結婚する旨の報告をした。全く、便利な時代である。  本来は直に行くべきなのだろうが、夏の観光シーズンは、航空機の格安チケットが取りにくいのだ。遠方なだけに、交通費は馬鹿にならない。  先方の家族は、以前から先生とのやり取りで僕の事を聞いていたらしい。どうも、先生にプロポーズする様に背中を押したのも向こうだった様で、あっさりと結婚は了承された。  異人種、まだ学生、年齢差、天涯孤独等々、こちらがマイナスと考えている点は全て問題ないとの事で、むしろ先生に、僕をしっかり支える様にと激励していた。  経済的には裕福そうで、ウサギの畜産を手がける大規模農場経営が家業だという。  どうも、娘を日本に送り出した際には、ウサギ肉を輸出する糸口を造れないかという淡い期待もあったらしい。現在の日本ではウサギ食が廃れてしまった現状を知り、諦めていたそうだ。  だが、先日のすき焼きの件を聞いて、見込みがあるのではと再び思い始めたと言う。  大学から解雇されて以後、専業主婦状態で暇を持て余している先生は、実家の意向を受け、会社を設立登記(実質ペーパーカンパニーだが)した上で、件のすき焼き店にウサギ肉の売り込みを掛けてみた。     
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