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ウサギ肉の取引の方は、主に先生がメインで動いている。供給元は実家なので、そちらは心配する事無く、僕達は日本側での売り込みに集中出来ている。
今のところ、初期に取引を持てた十数件の飲食店への販売は順調だが、ウサギ料理を手がける店が少ないという根本問題はいかんともし難く、新規開拓が停滞している。しかし冷蔵肉の少量輸入では高コストのままなので、何とか規模を拡大したい物だ。
ウサギ肉の普及をはかるには何をすればいいのかと考えながら、僕は学舎に向かった。ちなみに結婚時の約束として、退学や休学はせず、卒業までは学業優先という事で、僕は学び続ける事が出来ていた。
加えて、うちの大学には、学生起業を支援する制度がある事にも助けられている。就職氷河期に始まったこの制度により、学内に仮オフィスを借りる事が出来たり、契約時の保証を行ってくれたりするのだ。
先生を解雇した事については大学側も後ろめたさがあるらしく、仮オフィスの賃料は免除してくれる事になった。光熱費も請求しないという。
ただ、先生の退職は”起業の為”という事にして欲しいというのが条件だった。揉めたくもないので、僕達はそれを受け入れた。
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学内では新年度の恒例行事として、部活動や同好会の勧誘合戦が盛んになっている。
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