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そんな事も知らないのかと言いたそうな、ドヤ顔で上から目線の勧誘員に、僕は一言言ってやった。
「……のぼりのナの字、棒が一本多いよ」
「ああっ!」
「ナ」を「サ」と書き間違えた、単なる誤字だったらしい。僕の指摘に、勧誘の面々は頭を抱えていた。
昨年の先生と同じ様な間違いにクスリとしつつ、僕は入会を申し入れた。コンテンツ作成が得意なら、僕達の仕事の広報を手伝ってもらえるのではないかと考えたのだ。
「あざーす!」
「後、僕は新入生じゃなくて三年次ね。これ、学生証」
「え? え?」
彼等は喜んだのもつかの間、僕が三年次と知ると妙に恐縮していた。
現在の二年次が造った同好会という事で、三年次は僕一人だけという事である。
同好会は、総勢五人。勧誘出来たのは僕を含めて五人だから、倍の計十名になった訳だ。
僕が最年長になる為、会長は代表の地位を譲ると言ってきたが、起業したばかりで忙しいからと謝絶すると、彼だけでなく、皆が驚いていた。
「起業って、凄いっすね、先輩!」
「いや、起業と言っても実質、妻の実家の手伝いでね。そこは畜産をやってて、取れる肉の輸入販売なんだ」
「学生結婚! 輸入って、外国? となると国際結婚ですか?」
「うん。妻はポルトガル人で、去年までここで講師をしてたんだよ」
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