ウナギが滅びそうなら、ウサギを食べればいいじゃない

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 辺りは、日々の買い物らしき主婦で賑わっていた。僕も、自宅の冷蔵庫が空になっていた事に気付いて、食材を買って帰る事にした。  今日は土用の丑の日だ。ウナギの値段は年々上がっていく一方で、絶滅の危機すら報じられている。だが、そんな事は関係ないとばかりに商店街には「うなぎ」と書かれたのぼりが建ち並び、蒲焼きの旨そうな匂いが立ちこめている。  報じられている状況が若干気にならなくもないが…… そう言えば、両親と最後に食べたのは、鰻丼だった事を思い出す。  今日はウナギを食べながら両親を偲ぼうと、スーパーの入口をくぐりかけた処で、スマートフォンが鳴った。画面を見ると、僕が通う大学の講師からだ。  ”奢るから夕食、一緒にどう?”という、有り難いお言葉に、僕は”喜んで!”と返信した。  待ち合わせ場所に行くと、金色の長髪をツインテールにした、浴衣姿の白人女性が待っていた。  今時の都市圏で白人は珍しくもないとはいえ、彼女は服装からそれなりに目立っていて、注目する通行人も結構いる様だ。  彼女はポルトガル人で、僕が入学する直前に院を卒業したから実感は乏しいのだが、元々はうちの大学の留学生だ。卒業後は、非常勤講師の扱いで第二外国語の一つであるポルトガル語の講義を担当しており、僕も受講している。     
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