2人が本棚に入れています
本棚に追加
先生の留学生時代を知る一部の院生は、彼女を「先生」ではなく「先輩」と呼ぶのだが、僕を含め、彼女の卒業後に入学した学生は普通に「先生」と呼ぶ。
若い在留外国人にはよくある話だが、日本アニメのファンが高じて来日したのだそうだ。特に、世界中で人気がある”セーラー服の少女集団が悪と戦う女児向け活劇アニメ”がお気に入りらしい。
僕と友人めいた個人的な交流を持つ様になったのは、書店で彼女を見かけた僕が声を掛けてからだ。その時は知らなかったが、彼女が物色していたのが、男色をテーマとした「BL」と呼ばれる女性向け官能作品の棚だったとかで、慌てた彼女は僕に「食事を奢るから黙っていて」と懇願して来たのだ。
以来、この様な、時折食事を共にする交流が続いている。
どうせ家に帰っても孤食なのだし、食事は誰かと食べた方が美味しい。それに、彼女は年上で有職者という事もあって、誘われた時は常に奢ってくれるのも嬉しい。
僕と目が合うと、彼女は手を振ってきた。
「先生、待ちました?」「全然ー」
”浴衣にツインテールの外人姉ちゃん”に対する周囲の好奇的な視線を気にする事無く、彼女は何気に僕に腕を絡めて来た。
並ぶと身長は同じ位だが、僕が童顔なので、人種が同じならカップルというより姉弟に見えるだろう。
「おねショタですよー、おねショタ。少年とお姉様ですよー」
最初のコメントを投稿しよう!