2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ウサギ? 珍しいですね」
ウサギ肉とは。昔はよく食卓にのぼっていたらしいが、今は殆ど見られない代物である。
「日本では土用の丑にウサギを食べるというじゃないですか。それなのに食べられるお店がなかなか見つからなくって、ここに行き着くには苦労しましたー」
「先生。それ、ウナギです。ポルトガル語で言うとENGUIA」
「ええっ!? そうだったんですかあ!?」
僕の指摘に、先生は慌てふためく。……やはり勘違いだった様だ。この人、日本在住歴は結構長い筈なのだが。
「一応”ウ”が頭に付く物なら土用の丑の食べ物という事にはなってますから、間違いでもないのですけどね」
「良かったー」
先生はほっとした様子で、自らも鍋をつつき始めた。
「美味しいですよねー」
「ええ。ただ、ウサギは日本で、今は殆ど食べられていないんですよね」
「そうみたいですねー。いつ頃からでしょう?」
「さあ…… 少なくとも、自分に食べた覚えはないですね。はっきりとは解りませんけど、社会が豊かになって、段々と食べられなくなったのではないでしょうか」
「ヨーロッパでは今も昔も、普通に出回ってますよ-」
「それは知っているのですが。コスト…… でもなさそうですし」
最初のコメントを投稿しよう!