ウナギが滅びそうなら、ウサギを食べればいいじゃない

5/30
前へ
/30ページ
次へ
「ウサギ? 珍しいですね」  ウサギ肉とは。昔はよく食卓にのぼっていたらしいが、今は殆ど見られない代物である。 「日本では土用の丑にウサギを食べるというじゃないですか。それなのに食べられるお店がなかなか見つからなくって、ここに行き着くには苦労しましたー」 「先生。それ、ウナギです。ポルトガル語で言うとENGUIA」 「ええっ!? そうだったんですかあ!?」  僕の指摘に、先生は慌てふためく。……やはり勘違いだった様だ。この人、日本在住歴は結構長い筈なのだが。 「一応”ウ”が頭に付く物なら土用の丑の食べ物という事にはなってますから、間違いでもないのですけどね」 「良かったー」  先生はほっとした様子で、自らも鍋をつつき始めた。 「美味しいですよねー」 「ええ。ただ、ウサギは日本で、今は殆ど食べられていないんですよね」 「そうみたいですねー。いつ頃からでしょう?」 「さあ…… 少なくとも、自分に食べた覚えはないですね。はっきりとは解りませんけど、社会が豊かになって、段々と食べられなくなったのではないでしょうか」 「ヨーロッパでは今も昔も、普通に出回ってますよ-」 「それは知っているのですが。コスト…… でもなさそうですし」     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加