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だが、一緒にいて気分が良い人である事も確かだ。突然の事だが、僕は決断しなくてはならない。ここで否と言えば、先生はいなくなってしまう。
……現実的な生活の目処はどうか。僕は学生で、先生は失職。
親の遺産、生命保険金、事故の相手から支払われた賠償金。そして、僕一人が暮らすには広すぎる持ち家。僕が就職するまで、先生と二人で食べていく財力はある。加えて、日本人の配偶者としての在留資格ならば、先生も就労に制限はなく、落ち着いて職を探せるだろう。勿論、僕自身もバイトすれば良いし。
歳が上に離れた女性、しかも国際結婚となると、親兄弟や親類から懸念の声が挙がるのが普通だろうが、天涯孤独の僕には関係ない。
……そう、僕は天涯孤独だ。だが、先生が家族になってくれれば、もう一人ではない。
「僕は身内がいないからいいんですが、御実家は大丈夫ですか?」
「私、姉妹が多いですし。両親もいい人を見つけたら、そのまま日本で幸せになれって言ってくれてますから」
最後の懸念もなくなり、僕は決心した。
「僕がパートナーで良ければ、家族になって下さい」
「本当ですか!」
先生はそのまま僕を、絶対に離さないとばかりに抱きついて来た。
一人暮らしで寂しかった僕の家はその日から、居心地良い場所へと戻った。
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