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 そして長い長い夜が明け、うっすらとした陽光が室内に洩れ入る頃になりますと、さすがにお疲れになったのか、お二人のお声も聞こえなくなっておりました。  さんざんお乱れになった若鮎さまはもちろん、猛獣のごとき性欲を漲らせる主さまも、今は安らかにお眠りになっておられるのだろうと目を向けましたところ、意外にも主さまはまだお休みにはならぬまま、腕の中に眠る若鮎さまを静かにご覧になっておられます。  それはまるで慈しむようなお優しい眼差しでございまして、わたくしは初めて拝見するそのお姿に、なにやら深い感銘を受けたのでございます。  その主さまの懐で安らかな寝息を洩らしておられる若鮎さまは、玉のように美しく、また年端も行かぬ童のように愛らしゅうございました。
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