第2章

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 嘘だろうとか、まさかとか、そんな言葉がぐるぐると頭の中で回り続けていた。 「本当に流されやすい? でも男相手は流石にちゃんと抵抗しないと駄目だよ。相手は女の子じゃないんだから、嫌なら突き飛ばすなり殴るなり意思表示しないと」  突き飛ばす? 殴る? 誰が? 誰を?  月城の言葉の意味が上手く理解できない。それよりも普段より意図的に抑えた月城の声に、ぞくりと肌が粟立つ。 「そうじゃないと……俺が変な期待をしたくなるから」 月城は再び顔を寄せてくる。 「っ……ん」  一度目より深くなった交わりに、宇坂は吐息を漏らした。強く抗う気になれないのは、酒に酔っている所為なのかもしれない。抵抗感も嫌悪感も曖昧で、その接触がもたらす感覚だけが確かだった。ぬるりと口内に侵入した月城が、敏感な歯茎の裏側を舐め上げる。びくっと宇坂の肩が跳ねた。思いがけず感じてしまったことが月城にも伝わったのか、頬に手を添えられ、もっと口を開くように促された気がした。宇坂は躊躇いつつも流されるようにそれに応じた。 「ぅ……ふっ」  軽く触れただけの最初のキスとはまるで別物だった。舌をからめとられ、くちゅっと水音が立つ。その音と与えられる刺激に僅かに下腹が疼いた。そんな自分に驚いて、宇坂は少し正気を取り戻す。それに気付いたらしい月城が唇を解いた。 遠くの方で後半戦開始を告げるホイッスルが聞こえたが、今はそれどころではなかった。
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