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深夜のラジオ局 1.
──よりによってバイト先に忘れ物するなんて……。
スマホの充電器がないことに歌穂が気が付いたのは、友達と外食して喋りにしゃべり倒して喉も枯れたので、家に帰ってきたまさにそのタイミングだった。
「明日でもいいかな」と思いかけて、歌穂はぶんぶんと首を横に振る。ダメ、絶対にダメだ。
だって既に手元のスマホの電池材料はわずか二パーセント。このところ歌穂のスマホは急
に電池が減るようになってしまった。思えば使い始めて年数が経っているから、電池も消耗してへたっているのだ。
「仕方ない!取りに行こう」
歌穂は気を取り直して、脱いだコートを再び羽織る。残り二パーセントでは明日の朝の
アラームにも使えないし、緊急の連絡が入らないとも限らない。
しかも友達とすっかり話が弾んで遅くなってしまい、もう電車はない。自転車でバイト先に向かうしか道はなかった。
「やれやれ……」
自分が悪いのはわかっている。でもため息が出てしまう。まだシャワーを浴びて寝るだけ、というところで気付かなくてよかったけど。
しかし時計を確かめると、深夜一時を過ぎていた。
──わ、さすがにちょっと遅すぎるかな。
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