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 ガイダンスの資料に目を通し、段取りを考え、講義についてのチェックをし、朝のミーティングを終えて、フラフラになりながら廊下へ出る。  脳みそ、燃えそう……。 「大丈夫か?」  保が体を支えてくれ、ほっとした。 「俺、顔、ひどい?」 「疲れてる感はあるな」 「そっか。じゃあ、気合い入れて、顔つくらないとな」  保が背中を撫でてくれる。 「無理するな。身なりを整えていれば、結構、ごまかせるもんだ」  俺は保の前に立った。 「変じゃねぇ?」 「ああ」 「大丈夫。庸輔さんは弱ってても、それがいい味だしてるから」  背後から発せられた声に、背筋が伸びる。  小塚はリュックを背負い、歯を見せて笑った。 「小塚君、学校は?」 「自宅謹慎中」 「そ、そう……」  小塚の包帯が巻かれた手に、俺は奥歯を噛みしめた。  俺の視線に気づいた小塚は手を上にあげた。 「これは俺の戒めだ。自分も含め、人は傷つけない。俺はそんなヒーローになる。庸輔さんの言葉、忘れない」  小塚の中に受け入れる容量がなければ、ただの戯れ言だったよ。 「俺、庸輔さんの講義、受けるためにここへ来た。これから一年、きっちり学ばせてもらうから」  俺を見ていた小塚の目が横へと動く。瞬間、小塚の顔がパッと輝いた。 「竜!」 「え?」  小塚の恋人?  振り返ったそこにいたのは……。
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