第3章 #2

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楽しいことも、苦しいことも、嬉しいことも、悲しいことも、全部、全部。 私の青春は、京都の町とともにあった。 色んな感情が、自分の体の中をうごめくように巡っていた。 ひからびていた体に、一度に水が流れ込んでくるような感覚だった。 なんだか今日は、寝れそうにない……。 実家に戻った私は、二階の自室で既に敷かれていた布団にもぐりこんだ。 布団の中でも胸に抱き締めているのは、若草色の日記だ。 私はもう忘れたくなかった。 脳裏をかすめるように蘇ったこのかすかな記憶さえも、手放したくないと強く思っていた。 私はゆっくり、瞳を閉じる。 「コウ」 夢の中で出会えたら、そう願ってしまう自分がいた。
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