第3章 #2

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一人暮らしを始めて、早7年。食卓に座れば料理が出てくる有難さを身をもって感じる。 「お母さん、今年のお味噌も手作り?」 「そうやで。東京に持って帰るか?」 「うーん。いいや。新幹線で匂いそうやし」 「ほんまこの子は」 「だから、宅配便で送ってよ」 「……ええよ」 そう言いながらまた台所へ戻る母の背中を見ていた。母はガスに火をつけ、また何かを作り出したと思ったら、「これも食べ」そう言って、湯豆腐鍋を持ってきた。 「わ、湯豆腐やん」 温め直された湯豆腐鍋には、豆腐の横に長めに切った青ネギ、シイタケ、京湯葉まで付いていた。 「灯里、好きやろ?」 「うん!」 跳ねあがって喜びたいくらいだ。
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