第3章 #2

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この豆腐は、近所の老舗の豆腐だ。 美味しいと評判で、旅館でも使われているこの豆腐が、私は小さい時から大好きだった。 「昨日、灯里が帰ってきてるって言ったら、多めに分けてくれはってんで」 「おじちゃんが?」 「そうやで」 「……そっか」 「はよ、食べ。冷めるで」 「うん」 母特製のポン酢に湯豆腐をつけて、口に運ぶ。しっかりと弾力があり、崩れることはないのに、口に入れると溶けるように広がっていく。 甘みのある豆腐の味は、昔と変わらない。 私は野菜の炊き合わせにも手を伸ばした。
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