第3章ー2

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窓拭き、床拭き、トイレ掃除を終えた私は、玄関先の水撒きを任された。 太陽に熱せられた石畳に水を撒くと、シュンと音を立てた。 石畳の内側に水が浸透していく姿を眺めながら、私は水を撒いていく。 目に映るのは、手入れの行き届いた昔ながらの建物だ。 この辺りは、旅館や小料理屋が建ち並ぶ場所なのだ。 水を撒いていると、路地下の大通りを左手に曲がる人力車が見えた。 着物を着た若い女の子を二人、乗せている。その人力車は緩い坂道を上り、そのまま旅館の前までやってきて、車を止めた。 「ここですね」 「ありがとうございます」 「では、素敵な青い月の夜を」
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