第3章 #2

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幼い日の自分の声まで、聞こえてくるようだった。 『美人っていうか、ちょっとは、おしとやかにならなくちゃ』 『無理だろ』 その声は、空から落ちてくるわけではなかった。 その声は神々が連れてくる風と一緒に、神水を通って、私の体に響くように届いていた。 脳裏に、見たことのない映像までもが、流れてくるようだ。 『美人ってさ、何をもって美人って言うの?』 低い声がまた聞こえた。 『綺麗ってことなんじゃないの? 綺麗な人を見ると気持ちがいいでしょ』 高校生の私がそう答える。 『そうか』 『うん』 『人の美を表すものは、容姿だけじゃないと思うけど』 『え?』 『言葉も立ち振る舞いも、全部。そうだな。生活環境や受け継がれたものもあるかもしれない。そういう清さすべて含めて、美しさだと思うけど』 『……相変わらず、難しいね』
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