第3章ー2

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「灯里ちゃん。ありがとうございます」 「ううん。私にできることなんて、これくらいしかないし」 「そんなことないですよ。大変助かっています。それに、灯里ちゃんの顔を見れただけで、女将さん、とても喜んでいますから」 にこやかな笑顔を向ける酒井さんの姿に、安心する自分がいた。 「それに、今日は特に忙しい夜だから、女将さんも有難がっていますよ」 「あ、そっか。祇園祭が始まったしね」 「それだけじゃなく、今日は満月なんです」 満月? たしかに昨日見た月は、明日には満月になるだろうと思わせる月だったけれど、満月なんて珍しくないじゃないか、と私は思った。 満月は、一か月に一度は訪れるものだから。 「満月を見に、わざわざ京都へ来るの?」
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