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「灯里ちゃん。ありがとうございます」
「ううん。私にできることなんて、これくらいしかないし」
「そんなことないですよ。大変助かっています。それに、灯里ちゃんの顔を見れただけで、女将さん、とても喜んでいますから」
にこやかな笑顔を向ける酒井さんの姿に、安心する自分がいた。
「それに、今日は特に忙しい夜だから、女将さんも有難がっていますよ」
「あ、そっか。祇園祭が始まったしね」
「それだけじゃなく、今日は満月なんです」
満月?
たしかに昨日見た月は、明日には満月になるだろうと思わせる月だったけれど、満月なんて珍しくないじゃないか、と私は思った。
満月は、一か月に一度は訪れるものだから。
「満月を見に、わざわざ京都へ来るの?」
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