第3章ー2

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*** 京都は歴史のある町だ。それと同時に色んな物語が眠っている。 ある場所では、キツネが人に化けて出てきて騙されたとか、近所にある産寧坂では、転ぶと3年以内に不幸があるだとか、様々な噂話が後を絶たない。(現に、何度も産寧坂で転んでいる私だけど、何も起こらなかった) だから「数年前、京都の嵐山でブルームーンの夜に奇跡が起きた」という話も、その類のひとつなのだろう。 旅館の手伝いが終わり、着替えを済ませて家に帰ろうと外に出ると、辺りは紺色に包まれていた。 振り返って旅館を見ると、灯りのついている部屋がふんわりと浮かび上がっている。 京都の夜は早いから、この辺りのお店もきっと店じまいをしているのだろう。 「おなか減ったな」 独り言を漏らした私は、「やっぱり町にいこ」そう考え直して、坂道を下った。
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