第3章ー2

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一人で入るのは勇気が必要だったけれど、実際に入ってみれば楽しかった。 鉄板を挟んだカウンター越しに、気さくな女将が、いろんな話を聞かせてくれた。 店内からは白川が見えた。 緑が美しい柳も見える。 美しい景色に見惚れるようにそちらを眺めていると、巽橋の上を舞妓さんが歩いていた。 カランコロンと、どこからかおこぼの音が聞こえてきそうだった。 「ごちそうさまでした」 食べ終わって、赤色の絨毯を敷いた玄関で女将に声をかけると、 「ありがとうございます。また来てくださいね」 と、京都弁のイントネーションで言われた。 私は、女将の笑顔につられるようにニコリと微笑み返して、店を出た。 店を出ると、外はすっかり夜だった。
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