第3章 #2

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風が止むと音が途切れた。もう声は聞こえない。 私は神水から手を引き抜き、濡れた手をハンカチで拭いて空を見上げた。 夜空には大きな月が輝いている。 月が満月の形になるまで、まだ少し時間が足りないようだったが、十分な光を宿しているように思う。 大きな月とその周りで瞬く星たちを見ながら、私は思った。 あの声の主は、誰だったのだろう。 私はこの場所で誰かと何かを話したのだろうか。 何か大切な思い出が、この町に眠っているのだろうか。 私は何を忘れているの――?
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