第3章ー2

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見慣れた光景のはずなのに、私の足は動かなかった。 それは、新橋の真ん中から向こう側が、とてつもなく青かったからだ。 橋の真ん中で線引きされたかのような色の違いがある。 私のいる世界は、青と言っても水色のような、青いけれど光が十分に届いていない場所だ。 けれど、あちら側は違う。 その世界は、濃い藍色をしていた。 京都の町は繋がっているはずなのに、そこから先は、同じ空間に思えなかった。 どうなってるの? 私は混乱しながらも、そちらの世界を見ていた。 ドクンと胸が鳴る。 そちら側の深く蒼い世界の中に、誰かがいるのが見える。 新橋の向こう側で、誰かが青い月を見上げている。 その人は、男の人だった。
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