18人が本棚に入れています
本棚に追加
見慣れた光景のはずなのに、私の足は動かなかった。
それは、新橋の真ん中から向こう側が、とてつもなく青かったからだ。
橋の真ん中で線引きされたかのような色の違いがある。
私のいる世界は、青と言っても水色のような、青いけれど光が十分に届いていない場所だ。
けれど、あちら側は違う。
その世界は、濃い藍色をしていた。
京都の町は繋がっているはずなのに、そこから先は、同じ空間に思えなかった。
どうなってるの?
私は混乱しながらも、そちらの世界を見ていた。
ドクンと胸が鳴る。
そちら側の深く蒼い世界の中に、誰かがいるのが見える。
新橋の向こう側で、誰かが青い月を見上げている。
その人は、男の人だった。
最初のコメントを投稿しよう!