第3章 #2

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相変わらず、京都の夜は終わるのが早いな……。 神社の神様が『早く帰りなさい』と言っているような気がしたけれど、私はなぜだかまだこの場所から離れたくなくて、オレンジ色のライトが灯る石段を見つけると、そこへ向かった。 石段に腰を降ろすと、鞄の中に忍ばせておいたあるものを取り出した。 それは、若草色をした日記帳だ。 私はパラパラとページをめくる。 そして、17歳の夏のページで手を止めた。 当時の日記を読み返してみる。 6月30日 明日から祇園祭が始まる。 「宵山には、彼氏と一緒に行きたい!」と菜花に言うと、 「半月で彼氏ができるわけないやろ」と、突っ込まれた。 これは、7年前の今日だ。 私はまだ初恋も知らない、恋に恋する女の子だった。
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